赤字だから会社が潰れるのではなく、手元資金がなくなるから会社は潰れます。
手元資金は最低でも月商の1か月分、理想は月商の3か月分確保しておく必要があります。
銀行は本当に会社が困ったときにはお金を貸してくれません。銀行と上手に付き合い(実績を作る)、会社内に一定の資金が確保されている状態を常に保っておくことが大切です。
なお複数の金融機関と取引し、銀行間に適度な緊張感を持たせることも重要です。
(1)銀行融資のポイント
①重要性・・・決算書70、試算表25、事業計画書5
②借入限度額・・・年商の2分の1までが限度←担当者はまずここを見ます。
③借入可能な財務状態・・・2期連続赤字でない、債務超過でない(純資産がプラス)、税金・社会保険料の未納がない
④多額の仮払金、貸付金がない・・・保証協会が嫌がります
(2)どの銀行と付き合うべきか
・日本政策金融公庫・・・審査が早く、保証協会の枠に影響しないので、起業時や初めての借入にお勧めです。公庫でも中小企業事業と取引ができるようになると銀行は評価してくれます。
・信用金庫・・・金利は高めだが柔軟。保証協会付き融資が基本、担保評価が高め
・地方銀行・・・地元の地銀は、地域経済を担っているという自負がある。保証協会付き融資が基本
・都市銀行・・・取引会社は大手、海外取引のノウハウが多い
→まずは、公庫(国民生活事業)と信金や地銀からスタートし、その後会社規模の拡大により、公庫(中小企業事業)や都市銀行と付き合う流れになります。
メインバンクを決め、公庫からの借入とメインバンクからの借入をその銀行に入金し、運転資金口座として利用します。メインバンクとの関係を構築した後、手元資金を確保するため、また銀行間での金利交渉などを有利に進めるため、複数の金融機関とも取引を行うべきといえます。
また返済実績、将来性、利益、年商、保有資産など、どこを評価してくれるかは、その時、その銀行、その支店長・担当者の能力によって変わります。そのため同じ業績でも、銀行によって評価は変わるので、その意味でも複数の金融機関と取引することは重要といえます。
ただし万が一リスケになったときに、借入している金融機関が多いと大変なので、多くても6、7行までにすべきといえます。
(3)どの資金使途で借り入れを行うべきか
利率の引き下げよりも返済期間を伸ばして資金確保を優先します。そのため返済期間の長い、設備資金>長期の運転資金>短期の運転資金の順位で借入を行うべきといえます。
高額な事務機器(複合機など)や自動車は、手元資金を確保するため、また融資枠を確保するためにも、リースや割賦も選択肢として利用すべきといえます。
→投資により手元資金が減少する場合には、万が一に備え、資金を事前に確保しておくことが重要です。
(4)決算書のポイント
①営業利益、経常利益で黒字が確保されているか。その期に発生した特別な経費(役員退職金、固定資産の売却など)は特別損失で処理を行う。
②借入金及び支払利息の内訳は、「銀行、支店、期末現在高、利率」を明記する。
③役員、株主からの借入金は、長期借入金とは別に表記する。
④売上高を大きく見せて(支払手数料などと相殺しない)、借入限度額をアップさせる。
⑤中小企業の会計に関する基本要領に沿った会計処理をする。
⑥減価償却をしっかり行っているか。法人税法上、減価償却は任意ですが、銀行は減価償却の有無を見て黒字か赤字の判断を行います。
⑦取引規模が同じ場合に、期首と比較して多額の売掛金や多額の在庫は粉飾を疑われます。
⑧多額の現金、役員貸付金、仮払金が計上されていないか。こちらは粉飾のほか、会社と個人のお金がしっかり分けて管理されていないと評価されます。
⑨役員報酬をしっかり計上したうえで利益がでているか。
資金ショートをしないよう銀行と上手に付き合い、一定の資金を常に会社に確保しておくことが大切です。
また決算書は税務調査以外にも、銀行借入やM&A、相続・事業承継のときにも重要な役割を果たしますので、しっかりとした決算書を作っていくことが大切といえます。