極めて高い水準の所得に対する負担の適正化措置の見直し~ミニマムタックス~
ミニマムタックスとは、一定以上の高額所得がある場合に、最低限の所得税負担を求める制度です。
株式譲渡所得は原則として 20.315%(所得税15.315%、住民税5%)の分離課税ですが、所得規模が大きい場合でも税率が変わらないため、給与所得などの総合課税(最高税率55%)に比べて税負担が低いという点が問題視されていました。
この是正のため導入されたのが、いわゆるミニマムタックスです。
①現行制度(令和7年、8年)の計算式は以下の通りです。
(その年分の基準所得金額-3.3億円)×22.5%>基準所得税額
⇒超過差額分を追加納付
※基準所得税額とは、通常の方法で計算した場合の所得税・復興特別所得税の額及び確定申告不要制度(上場株式にについて特別口座・源泉徴収ありのケース)を適用した所得に係る源泉徴収税額を合計したものをいいます。
現行制度の場合、株式譲渡所得のみの場合には概ね10億円を超える所得から追加課税が発生するため、対象は超富裕層に限定されていました。
②改正(令和9年から適用)
(その年分の基準所得金額-1.65億円)×30%>基準所得税額
⇒超過差額分を追加納付
そのため改正により、
・基準所得金額から控除する金額の引き下げ:3.3億円→1.65億円
・税率の引き上げ22.5%→30%になります。
改正後は、株式譲渡所得が概ね3.3億円を超えるとミニマムタックスが発生し、所得税の追加納付が生じることになります。
【どのような場合に影響を受けるか】
令和9年以降、基準所得金額が3億円を超えてくると影響を受けるため、下記のような取引がある場合には留意する必要があります。
①M&Aによる株式の売却
オーナー経営者がM&Aで株式を売却する場合、株式譲渡益が3億円を超えることも珍しくありません。令和8年中に株式譲渡契約を締結すれば現行制度の適用が可能なため、M&Aのタイミングにより税負担が変わります。
②事業承継・相続後の自社株式の売却
相続で取得した株式を発行会社に一定期間内に譲渡する場合、譲渡益の規模によりミニマムタックスの対象になります。
③不動産の売却
土地建物の譲渡所得も基準所得金額に含まれます、5年超保有している不動産を売却し多額の譲渡益が生じる場合にはミニマムタックスに留意する必要があります。
【改正前後の税負担のイメージ】
M&Aで株式を売却し、譲渡益が5億円生じた場合(万円未満切り捨てで計算)
①改正前
(5億円-3.3億円)×22.5%=3,825万円<5億円×15.315%=7,657万円
⇒追加納付なし
②改正後
(5億円-1.65億円)×30%=1億50万円>5億円×15.315%=7,657万円
⇒超過差額分である1億50万円-7,657万円=2,393万円の追加納付