【税務調査について】
法人・個人を問わず事業を行っていると、税務調査が入ることがあります。
税務署の部門ごとに、統括官、上席、調査官がおり、税務調査には、調査官や上席、ときには統括官が来ることもあります。また税務署には、このほかに特別国税調査官(以下「特官」という。)がおり、規模の大きい法人などは特官が調査に来ることがあります。
今回弊所のお客様で特官調査が続きましたので、税務調査の概要やよく見られるところを記載したいと思います。
(1)税務調査の流れ
税務調査の連絡は、基本的には税務署から税務代理を行っている当事務所宛に電話連絡がきます。その後、社長や経理担当の方と日程調整を行い、実地調査の日を決めます。
日程調整は可能ですが、納税者には受任義務が課されているため、税務調査を断ることはできません。税務調査は基本的に2日間ですが、特官調査の場合、3日間になります。
時間は10時~16時までで、1日目の午前中は会社の概要などを説明し、午後から帳簿等の調査が行われます。
(2)よくチェックされる項目
①売上除外や架空仕入れ、架空経費(架空外注費)等の計上による不正経理がないか、まずは確認されます。⇒これが見つかると重加算税の対象となります。
上記がない場合、下記のような細かい内容が確認されます。
②期ズレの確認
・期末売上の繰延べがないか・・・今期の売上を翌期に計上していないか。
・翌期仕入の繰上計上がないか・・・翌期の仕入を今期に計上していないか。
・期末棚卸資産の過少計上を行っていないか・・・期末在庫を少なくし、今期の損金を過大計上していないか。
・商品・貯蔵品等の期末大量購入・・・期末に残っていれば在庫として資産計上する必要があり、今期の損金にはなりません。
③退職金の支給がある場合、適切に源泉徴収などが行われているか。
④福利厚生費・交際費等の内容確認・・・私的なものが含まれていないか(家族旅行など注意)。
⑤消耗品費、修繕費の内容確認・・・全額損金計上したものの中に減価償却資産(1個あたり10万円以上、資本的支出)とすべきものはないか。
⑥減価償却資産の内容確認・・・償却方法、耐用年数など誤りがないか。
⑦貸倒損失、固定資産の売却など特別損益の処理の適正性、要件を満たしているか。
⑧生命保険の資産計上、損金処理の正確性。
⑨消費税について課税区分の処理が適切か。
⑩賃上げ促進税制などを適用している場合、要件を満たしているか。
⑪役員貸付金のほか現金や未収金が多い場合の認定利息の計上を行っているか。
⑫社宅がある場合、従業員から適正賃料を徴収しているか←ここは100%見られます。
⑬契約書に印紙が貼ってあるか。
【論点になった内容】
税務調査では、非常に期ズレのチェックが行われます。
従業員の決算賞与を決算月に計上し翌月に支給する場合、要件を満たせば決算月に未払計上し損金計上することができます。
https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/hojin/5350.htm
調査では下記が確認されました。
・支給額を事業年度終了日までに、支給を受けるすべての使用人に対して通知をしているか。
⇒従業員各人から通知を受けたという記録が残っているか。
・「賞与支給日まで在職していない社員には賞与を支給しない」という就業規則や社内規定になっていないか。
⇒社内規定がこの記載になっていると、未払費用として計上した債務が支給日まで確定していないことになるので、債務確定基準の要件を満たさず損金として認められないとなります。
・通知をした事業年度に未払計上し、事業年度終了の日の翌日から1ヶ月以内に支払っているか。
※結論として、決算賞与を未払計上して翌期に支払う場合、各人別に通知した資料の提示を求められるなど非常に煩雑でリスクになります。
そのため、決算賞与を支給する場合には、事業年度終了日までに支払うことをおすすめします。