(1)法人税の税務調査における非違(誤り)の指摘割合
日本の法人数は約295万社で毎年の実地調査件数は59千件です。
そのため税務調査の確率は約2%で、50社に1社の割合で毎年税務調査を受けていることになります。
そして、税務調査を受けて誤りを指摘された割合は約76%に及び、4社に3社の割合で誤っていることになります。
税務調査における不正発見割合(脱税など)は約22%となっています。5社に1社の割合で仮装隠ぺい事実が認められたことになりますが、実感として多いと感じる方もいらっしゃると思います。
税務署が事前に資料情報等から不正計算を行っている会社の情報を収集していることが伺えます。不正計算は加算税の負担が重くなるだけでなく、不正計算を行ったという事実が税務署に残り、今後、税務調査を受ける頻度が高くなります。
なお消費税の税務調査における非違割合は約60%、不正発見割合は約19%となっています。
(2)不正発見割合の多い業種
国税庁が公表した法人税等の調査事績の概要によると不正発見割合の高い業種として下記の10が挙げられています。
順位と不正発見割合・・・第1位バー・クラブ59.0%、第2位その他の飲食42.3%、第3位外国料理38.8%、第4位土木工事31.5%、第5位美容30.8%、第6位一般土木建築工事29.5%、第7位職別土木建築工事29.5%、第8位廃棄物処理29.2%、第9位船舶28.8%、第10位その他の道路貨物運送28.8%
(3)税務調査の選定対象になりやすい会社
・事業規模が大きい・・・売上が1億円を超えると税務調査に来る印象があります。
・利益が多くでている・・・税務調査官は調査により非違を見つけると評価につながります。そのため、非違を見つけ追徴税額が見込める会社を選定する傾向があります。
・過去に指摘を受けている・・・過去に重加算税などを受けていると定期的に来ることが想定されます。
・売上が増加しているが利益が少ない・・・同業種に比べて、原価率が高いと不正を疑われます。
・申告内容に不審点がある、リークがあった・・・税務署は職権で会社の通帳を見ることができます。通帳への売上入金額と申告内容にズレがある場合には、調査対象になります。
(4)KSKシステムとは
国税庁は、国税総合管理システム(KSKシステム)を導入して、全国の国税局と税務署をネットワークで結び、申告・納税の事績や各種の情報を入力し、コンピュータシステムにより一元的に管理しています。
このKSKシステムによる分析は税務調査や滞納整理に活用されます。もちろん、長期間未接触、好況業種、現金取引業種、マスコミ等で注目されている業種、課税当局が特に調査が必要と判断した業種等については、税務調査の対象に選定されやすいわけですが、システムが「異常値」を検知した場合にも、税務調査の対象法人として選定されやすくなります。
長期間、税務調査が行われない法人がある一方で、頻繁に税務調査が行われる法人があるのは、システムにより異常値が検知された可能性が高いからと考えられます。
例えば、同業他社と比較して、売上高伸び率や経常利益伸び率が低調である、同規模同業種に比して目立つ数値がある、また、売上、仕入、期末棚卸高、外注費、交際費等が著しく変動している等の場合には、システムが異常値を検知することになります。
システムが検知する「異常値」を作らないためにも、日ごろの経理業務においては月次試算表等の確認作業を欠かさないようにすることが大切になります。