【自社株式に関する相続税・贈与税の納税猶予制度について】

中小企業のオーナー経営者が後継者へ自社の株式の贈与を行う場合、後継者は自社株式の価額に対応する贈与税を、贈与のあった年の翌年3月15日までに納付を行う必要があります。またオーナー経営者が亡くなった場合、相続人はその自社株式の価額に対応する相続税を経営者が亡くなった日の翌日から10か月以内に納税する必要があります。

中小企業の場合、株価をもとに資金調達をしているわけではないので、普段会社の株価をあまり気にしていないと思いますが、老舗の会社や長年にわたって利益を出し続けている会社の場合、株価を計算するとびっくりする株価になっていることがよくあります。

現行の事業承継税制の特例措置をうまく利用すれば、この自社株式に係る贈与税・相続税について将来にわたって納税猶予および免除を受けることができます。

本制度の適用を受けるためには、まず経営承継円滑化法による都道府県知事の認定を受けたうえで、税務署へ納税猶予の申告を行う必要があります。

具体的には、令和5年3月31日までに都道府県知事に「特例承継計画」を提出し、令和9年12月31日までに贈与・相続により自社の株式を後継者に譲る必要があります。

上記までのステップにおいて、自社株式の評価や認定取消リスク対応のための株価引下対策、また税務申告や担保の提供、さらには贈与・相続時点で納税猶予の要件を満たしているかのチェックが必要となりますので、事業承継税制を適用するにあたっては専門家と二人三脚で進めることをお勧めいたします。

また贈与後に後継者が退任した場合など一定の事由に該当した場合には、この納税猶予の要件を満たしていないとされ、猶予された贈与税・相続税と利子税を一括して納付する義務が発生します。そのため、事業承継税制を適用する場合には、自社株式の贈与・相続後においてもしっかりフォローしていく必要があります。

実務上も、オーナー経営者から後継者に事業承継税制により株式を贈与した場合、要件の充足の有無について贈与後5年間は、都道府県庁へ「年次報告書」の提出(年1回)、税務署へ「継続届出書」の提出義務(年1回)が課されています。さらに5年経過後も税務署へは3年に1回「継続届出書」の提出義務が引き続き課されていきます。

当事務所では、相続税や贈与税など個人の資産税関係の申告を多く行っており、事業承継税制に対応しております。また事業承継は、単に税金だけの問題ではなく、後継者にバトンを渡し、企業がその後も永続的に成長していく過程をどのように築いていくかという経営資源の引継ぎの問題も発生します。

さらには後継者に自社の株式を贈与した場合、他の相続人の相続分を侵害することになりますので、そのバランスをどのようにとるかという問題も発生します。

そのため当事務所では事業承継税制について支援させていただく場合、税金だけの観点で見るのではなく、社員や取引関係者さらには他の相続人との関係でどのようにしたら事業承継全体がうまくいくのかを重要視していますので、定期的に現経営者や後継者の方とコミュニケーションをとりながら進めてまいります。

お気軽に当事務所までご相談ください。

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