相続税の「債務控除」とは~計算の方法や控除の対象になるものについて~
相続では故人(被相続人)の残した借金や未払金などの債務も引き継ぐことになり、相続税の額を調べるときも債務を考慮して計算します。「債務控除」と呼ばれる処理を行うことができ、相続税の課税金額をその分少なくすることができるのです。
債務控除の存在を忘れて相続税の申告・納付をしてしまっては相続人の負担が過度なものとなってしまいますので、適用ルールなどを一度確認しておきましょう。
債務控除の概要
債務控除とは、被相続人の残した借金などの債務、そして葬式費用を遺産総額から差し引くことができる相続税法上の仕組みのことです。
相続税は相続人等が得た利益の大きさに対応して課される税ですので、プラスの財産(資産)のみを対象とするのではなくマイナスの財産(負債)も考慮する必要があり、その計算上の処理を債務控除と呼んでいます。
そこでもし遺産に現金5,000万円があったとしても、借金2,000万円も残っているならその分を債務控除し、5,000万円-2,000万円の3,000万円が相続税の計算対象となります。
控除の適用方法・計算方法
債務控除の計算自体は複雑なものではありません。上述のとおり、相続財産の総額を調べ、そこから債務控除の対象になる債務の総額を差し引くだけです。
ただし、債務控除後の金額すべてが相続税の課税対象となるわけではありません。厳密には次のような手順で課税価格(相続税においては「課税遺産総額」と呼ぶ)を算出する必要があり、その一過程として債務控除を行います。
- 「相続税評価額」の調査
- 相続や遺贈で取得する各財産の価額を調べる。
- 株式や不動産など、評価方法の判定や計算が複雑なものに要注意。
- 「遺産総額」の計算
- 各財産の相続税評価額に、相続時精算課税を受け贈与した財産があるならその分を加算する。
- 相続時精算課税とは、贈与時点では一定額まで贈与税を課さず、相続開始後に課税処理を行う課税方式のこと。
- 「正味の遺産額」の計算
- 遺産総額から債務控除額を差し引くとともに、生前贈与加算をすべき財産があるならその分を加算する。
- 生前贈与加算とは、相続開始前7年以内に被相続人から受けた贈与財産を相続財産に加算する仕組みのこと(2023年以前の贈与については「前3年以内」)。
- 「課税遺産総額」の計算
- 正味の遺産額に基礎控除を適用
- 基礎控除額は3,000万円以上で、法定相続人が多いほど控除額は加算されていく。
以上の計算過程からわかるように、単純に遺産と債務の大きさだけで課税価格を把握できるわけではありません。
債務控除での対象になるもの
債務控除の対象になるものの代表例は「借金」でしょう。銀行など金融機関からの借入金、住宅ローンなどがあるならその分を遺産総額から差し引けます。複数人で借金をしていたときの連帯債務についても、そのうち被相続人が負担すべき部分については債務控除ができます。
※連帯債務の場合、債権者に対しては全額の弁済義務を負うが、支払いに応じた場合はほかの連帯債務者に対して求償する(支払いを求める)ことが可能。
ほかにも「クレジットカードを使用し、まだ支払っていない金銭」「医療費や水道光熱費などの未払い金」、そして「被相続人が納めるはずであった公租公課」も債務控除の対象です。たとえば所得税や消費税、住民税、固定資産税など各種税金の未納があるならその支払い義務を相続人が負うため、納付額分を債務控除できます。
なお、すでに未納になっている税金のほか、亡くなった年の所得に対応して発生する所得税なども対象です。
被相続人が事業を営んでいたときは事業上の未払い金・買掛金が残っている可能性も十分に考えられますので、注意してください。
また、被相続人の債務ではないものの相続税の計算上控除が認められている「葬式費用」も要チェックです。お通夜・告別式などにかかった費用分は、基本的に一般的な債務と同じように遺産総額から差し引きます。葬儀に関して発生した料理代・火葬費用・埋葬費用・納骨料・遺体の搬送費用・お布施など、通常葬儀に伴って発生する費用であるなら広く認められる傾向にあります。
間違いやすい債務や費用に注意
一見、債務控除の対象になりそうなものでも、控除が認められないものがいくつかあります。
たとえば「保証債務」です。被相続人が保証人になっている場合、弁済が行われなかったときは主債務者と同等の負担を負うことになりますが、相続開始時点で請求を受けることが確定しているなどの事情がなければ原則として対象外です。主債務者に返済能力がなくなっており保証人が負担しなければならないような状況なら債務控除可能です。
また、住宅ローンを組んでいたとしてもそれに「団信(団体信用保険)」が付いているときは、債務者である被相続人が亡くなることで保険金により債務が補填され債務がなくなります。そのためやはり債務控除の対象から外れます。
そのほか注意しておきたいものとして「仏壇や墓地を購入したときの未払い金」「香典返しの費用」「法事にかかる費用」「相続人の責任で納付が遅れ、発生した延滞金等」も挙げられます。
債務控除の適用を誤ると正しい相続税額が算出できなくなり、過少申告となってしまったり過度な負担を負ってしまったりするおそれがあります。対応に悩む債務があるときは税理士に相談し、正しく債務控除を適用すること、そして正しい内容で相続税の申告ができるように備えましょう。

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