相続税における障害者控除とは?条件や計算方法について解説
税金は公平に課税されるものですが、優遇措置もいくつか設けられており、その適用を受けることができれば税金の負担を軽減できます。相続税においてもいくつかの特例や税額控除の仕組みがあり、その1つに「障害者控除」というものがあります。
当記事ではこの控除制度について深掘りしていきます。
障害者控除を受けるための条件
障害者控除の適用を受けることができるのは、次の条件すべてに当てはまる方です。
- 法定相続人であること
- 相続または遺贈によって財産を取得したこと
- 財産を取得する相続人が障害者であること
- 財産を取得した時点で日本国内に住所があること
なお、この控除は「相続による遺産の取得」のみならず、「遺贈による遺産の取得」にも適用されます。
法定相続人でなくてはならないためそれ以外の第三者が遺言書で遺産を取得しても適用を受けられませんが、法定相続人であれば遺贈によって取得しても適用を受けられます。
そして相続放棄をしたときは相続による取得ができなくなりますが、遺贈による取得は可能です。遺贈は相続人としての立場でなくても受けることができるためです。そのため法定相続人である障害者が相続放棄をしても、遺贈により取得した遺産について障害者控除を利用することができます。
「障害者」と「特別障害者」の定義
ここでいう「障害者」とは心身に障害のある方のことです。そして後述するように、特に障害の程度が重い方は「特別障害者」として控除額を増額することができます。
そしてこれらの区分に該当するかどうかは、次のいずれかの事由に当てはまるかどうかで判定できます。
| 障害者の範囲 | 特別障害者の該当性 |
---|---|---|
① | 精神上の障害で事理弁識能力を“欠く”と評価される方 | 該当 |
② | 精神保健指定医等から知的障害者と判定された方 | “重度の知的障害者”と判定される場合は該当 |
③ | 精神障害者保健福祉手帳を持っている方 | 障害等級が“1級”の場合は該当 |
④ | 身体障害者手帳に身体障害者としての記載がある方 | 障害の程度が“1級”または“2級”の場合は該当 |
⑤ | 戦傷病者手帳を持っている方 | 障害の程度が“特別項症から第3項症まで”の場合は該当 |
⑥ | 原子爆弾被爆者として認定を受けた方 | 該当 |
⑦ | 精神または身体障害のある65歳以上の方で、①②④のいずれかに準ずるものとして認定を受けている方 | ①②④のうち特別障害者に準ずる認定を受けている場合は該当 |
扶養義務のある方が受けられることもある
「本人の相続税額が100万円、障害者控除の額が150万円」などと控除額の方が大きくなることもあります。
このとき、控除し切れなかった額については本人を扶養する義務のある方に適用されます。この例でいうと、「控除額150万円-相続税額100万円=残額50万円」となりますので50万円の税額控除を扶養義務者が使えます。
このときの注意点は次の2点です。
- 扶養義務者の範囲は、本人と次の関係にある者
- 配偶者
- 直系血族(両親、祖父母、子ども、孫など)
- 兄弟姉妹
- 3親等内の親族(配偶者の父母や兄弟姉妹、子どもの配偶者、甥・姪などもこの範囲に入るが、扶養義務が発生するのは特別の事情がある場合に限定される。)
- 本人が過去の相続において障害者控除を受けているとき控除額が制限されることがある
障害者控除の計算方法
障害者控除の金額を計算するのに難しい計算は必要ありません。
障害者と特別障害者の区別ができており、本人の年齢さえわかっていれば控除額が算出できます。
使うのは次の計算式です。
控除額 = 10万円×(85歳-本人の年齢)
(特別障害者の場合の)控除額 = 20万円×(85歳-本人の年齢)
もし本人の年齢が60歳であれば250万円(500万円)、30歳であれば550万円(1,100万円)、10歳であれば750万円(1,500万円)の税額控除が受けられます。
※()は特別障害者の場合の額。
「85歳-本人の年齢」の計算結果が1年未満となるときは要注意です。切り上げて1年として計算しますので、もし60歳と6ヶ月の方であれば「85-60.5=24.5」となり、「10万円×25」として計算できます。
この計算方法だと84歳と11ヶ月の方でも控除を受けることができます。
障害者の方が受けられる各種特例
障害者の方は、相続税に加え所得税や贈与税についても税額控除を受けることができます。
| 所得税 | 贈与税 | 相続税 |
---|---|---|---|
障害者 | 27万円の控除 | 信託受益権3,000万円までが非課税 | 85歳までの年数に応じて10万円を控除 |
特別障害者 | 40万円の控除 | 信託受益権6,000万円までが非課税 | 85歳までの年数に応じて20万円を控除 |
また、「心身障害者扶養救済制度に基づく給付金」に関しても所得税が非課税になる特例が設けられています。障害者・特別障害者の区別はなく、また、相続や贈与で給付金を受ける権利を障害者自身が取得した場合も相続税および贈与税が非課税となります。
このように税金の負担を軽減する特例がいくつも定められていますので、障害者の方に関して税の申告や納付を行う際は、「何か使える特例はないだろうか」と一度考えてみると良いでしょう。税理士に相談してもすぐに解決することができます。
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