相続税が払えない場合の対処法

相続税の申告期限は、亡くなった日の翌日から10ヶ月と定められています。

この申告期限までに現金一括で納付することができない場合、延滞税などが追加で課税されて本来よりも多額の金額を納税する必要が出てきます。

しかしながら、期限内に相続税を支払えない場合、期限の延長や物納など代替措置が認められる場合があります。

そこで、今回は相続税を申告期限内に支払えない場合、どう対処すればよいのかを解説いたします。

相続税が払えないときの対応

相続税を納めるための資金が準備できず、納税が困難な場合の対処策は主に4つあります。

相続税を分割して支払う「延納」

相続税を現金一括で支払えない場合には、分割で支払う「延納」という制度があります。

延納での支払いを希望する場合は、相続税の申告期限内に申請することが必要です。

申請条件に当てはまると、延納制度を利用できるようになり、最長で20年の期間にわたって延納制度を利用できます。

なお、相続する遺産に現金や預金などがないために納税が難しい場合であっても、相続人に資金力が十分にあるとみなされた場合、延納制度は利用できません。

例えば、相続人が自宅や自動車、金融資産などを多数所持しており、これらを換金した場合に相続税額分を十分に支払えると認められるときなどが考えられます。

延納が認められる条件

延納制度を利用するには、以下の条件をすべて満たしていなければなりません。

 

①相続税額が10万円より多いこと

②現金一括で納税できないと認められる困難な理由があり、その金額が困難なものであること

③延納税および利子税に相当する担保を提供すること

④申告期限までに「延納申請書」及び「担保提供関係書類」を提出すること

 

また、上記③における担保として認められるものは以下のとおりです。

 

①国債および地方債

⓶社債その他の有価証券で税務署長が確実と認めるもの

③土地・建物

⓸税務署長が認める保証人による保証

 

延納が認められれば、相続税額を延納期間の年数で分割します。これによって算出された年間の税額を、年1回のペースで納付していきます。

延納のメリット

延納制度のメリットは、単純ですが、分割して相続税を納められる点にあります。

つまり、支払いの負担が軽減され、相続放棄や限定承認のために遺産を選ぶ必要がありません。

延納のデメリット

延納制度のデメリットは、利子税を追加で納税する必要があることです。

利子税は延納期間に応じて課税され、課税額は本来の相続額に上乗せされます。

また、延納制度の利用条件の一つとして担保の提供が求められます。

担保として認められるか否かのハードルが高く、担保として認められた場合は担保を完納するまでの間は自由に処分することができなくなります。

相続税を代わりの財産で支払う「物納」

延納制度を利用してもなお、納税が困難な場合は、物納制度が第二の選択肢として存在します。

物納制度とは、遺産の不動産や株式など資産性の高いものを換金せずに「物の状態のまま」、相続税として納める方法です。

物納することができる物は遺産に限られ、相続人の財産では物納できません。

物納も延納と同様に申請が必要で、認められるための条件が存在します。

物納においても延納と同様に審査が存在し、その審査基準が高いことには注意が必要です。

物納が認められる条件

物納が認められるには、以下の条件をすべて満たす必要があります。

 

①延納によっても金銭で納付することが困難であること

②物納に充てる財産を申請すること

③申告期限までに「物納申請書」を提出すること

 

つまり、延納の利用が難しい場合であり、なおかつ一定程度の資産性が認められる遺産がある場合にとっては、物納は有効な制度といえます。

物納のメリット

物納の最大のメリットは、納税のための資金をすぐに用意できない場合でも、不動産や株などの遺産そのもので相続税を納めることができるということです。

つまり、当面の支払い計画や担保の目処も立たない、しかし、不動産などある程度相続税の足しになりそうなものがあるといった場合には有効な手段です。

物納のデメリット

デメリットとしては物納における遺産の種類や順位は決まっており、自分の選択で選べないことがあります。

また、相続税の納付に十分な財産を持っていない場合、物納は利用できません。

例えば、資産性が低いと認められる不動産の場合は、物納が認められない可能性が非常に高いです。

その他にも、物納する遺産の価値は、相続税を計算する評価額に基づくという原則があります。

例えば、評価額を特例で減額している場合、減額後の価格が評価額となります。

したがって、物納の対象物が売却可能ならば、売却後に通常通り納税した方が良い場合も存在します。

相続した遺産を売却・換金して支払う

現金や預金がないものの、相続した遺産に不動産や株式などの資産性が高い遺産が存在する場合、相続した物をまず売却して現金化し、その売却代金で相続税を支払うという方法があります。

例えば、亡くなった人のご自宅に誰も住む予定がない場合、売却してしまうといった事例などです。

不動産を売却して支払うメリット

メリットとしては、遺産を高額で売却することができれば、相続税を納めることは勿論、売却による利益が生じる可能性があり、物納を行うよりもお得な可能性もあります。

また、相続不動産を売却する際には、譲渡所得税の軽減など相続税上の特例が適用され、通常よりも低い税額に抑えることができるのでこういった制度も併せて活用していくことが重要です。

不動産を売却して支払うデメリット

デメリットとしてはすぐに売却できない場合、期限までに納税のための資金を準備できなくなってしまう恐れがあることです。

また、期限内の売却のために売り急いで安く売り払ってしまい、想定以下の金額しか確保できない可能性もあります。

また、不動産の売却には、事前準備として登記の手続きや手続きに要する時間や申告期限内に売却が完了できるかどうかなどは判断要素が多く、慎重な判断が求められます。

金融機関で納税資金を借りてローンで支払う

金融機関から借り入れを行って、相続税を支払うという方法もあります。

ローンでは納税資金を目的とした借り入れを行うことができますが、返済可能なことが前提となり、金融機関の審査を通過する必要があります。

金融機関から借り入れて支払うメリット

メリットとしては、確実に相続税を支払える点です。

他の制度利用で考えられるような、納税を急いだ結果、手放したくない実家の不動産や財産を無理やりたたき売りする事態などを避けることができます。

金融機関から借り入れて支払うデメリット

一方、デメリットとしては借り入れを行うため、利息がかかります。

返済可能かどうかの確認は必ず行いましょう。

また、借り入れには条件が存在し、必ずしも借り入れができるとは限らない点も注意が必要です。

相続に関するお悩みはAP総合税務会計事務所にご相談ください

AP総合税務会計事務所では、相続に詳しい専門家が在籍しております。

相続税の支払いが難しい場合であっても、相続放棄を回避できる制度をご紹介できる場合があります。

ご相談の際には、制度の対象となるのかなどメリット・デメリットまで含めてご説明いたします。

具体的な相続税への対応策や利用できる制度を知りたいなど相続や相続対策で気になることや疑問点がある方はお気軽に当事務所までご相談ください。

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